狐火の辻

これを読む前に『狂い壁 狂い窓』を読んでいて良かった。

もしも未読の人がいたら、本作より前に読んだ方が良い。逆順だと怖さが半減すると思う。

ホラーのような怪事件、不気味な噂が人の仕業として解明されるというミステリーの王道的な話なのだが、独特の手触りがある。『虚無への供物』に触発されて新時代の奇書となった『匣の中の失楽』を世に問うただけあって、本作も『虚無への供物』とどこか似た味がする。本作はいわゆる「アンチミステリ」ではないと思うので、作品としては全然違うのだけれど、「寄る辺ないさみしさ」のようなものがそこはかとなく漂っている気がする。