Un simple accident (シンプル・アクシデント/偶然)

simpleaccident.com

笑ってしまうのだが、笑っていいものか。表現はコメディー寄りで、明らかに笑わせに来ているのだが、扱っているテーマは重い。

親子三人のドライブ中に起きた最初の事故のシーンで不穏な空気を漂わせつつ、動かなくなった車をガレージ前につけた父親、その義足の音が自分を苛め抜いた看守と同じだと気付いたワヒドは親子の後をつけ、見事に父親を誘拐する。しかし、男が人違いを主張したため、同様に人生を奪われた囚人仲間を訪ねて真贋をつけようとする。その道中も珍道中ものになっていておかしい。その間、男は車の収納の中に押し込まれている状態。そこに、娘からの電話があり、母親が倒れていて誰も頼れないという。一同は臨月の母親と娘を病院に連れていく (もちろんこの間も父親は車の収納の中)。観客がまじめだったので誰一人くすりともしなかったが、このあたりまではおかしみが勝っていた。

しかし、娘が父親以外への電話を禁止されていたことが明らかになってから映画の空気が変わる。そして、スリラーにありがちな俗な結末だが、ピタっと決めて終幕。

悲喜劇、重みと軽みの同居、また、それぞれのキャラクターの書き分けがくっきりしていて、どの人物の物語としてみても面白い、良い映画だった。

冷気のエレメント

「門閥の母」

曰くありげに話題にされていた門閥の母の一代記、あっさりと一話で終わった。セト=アポフィスでももう少し長めに過去を振り返っていたが。SFのアイディアとしては滅びゆく種族が全てをかけた一つの細胞を宇宙に送りだす、というのが面白かった。

「冷気のエレメント」

こちらはさらに破天荒。無限アルマダの標識たる人口天体ゴルゲンゴルが異宇宙の敵に見つかり、攻撃を受ける。それは、異宇宙にエネルギーを吸い出すことで絶対零度以下にしてしまうという冷気のエレメント。新たな混沌勢力はエレメントの十戒とのことで、他に九つもある予定。

銀河系船団の戦士グッキー

「ローランドレの前庭」

前庭には複数種族が門閥を形成していた。フィレルのグリデン=ホルムズは自種族の門閥長トゥルミエ=ベールをイルタフの門閥長イララソングの協力により排除して代わりにフィレルの門閥長におさまる。イララソングは負のフォームエネルギーで銀河系船団を足止めしていたが、フィレルの強力な武器で船団を殲滅するよう求めた。

ところで、前庭の種族には赤い巨大な複眼を持つローランドレのナコールのうわさが広まっていることが示されていたが、そのナコール、痴情のもつれで誘拐されてしまう。フィレルの攻撃で誘拐者は《バジス》に戻れなくなるが、そのために通信管制が解かれ、ナコールの存在を知ったグリデン=ホルムズは攻撃をやめて撤退する。

「銀河系船団の戦士グッキー」

イララソングは最強の戦士による一騎打ちを提案しグッキーが戦うことになった。伏兵による策を弄されて窮地となるグッキーはオーガンの呼気を止めることで辛くも勝利する。イララソングは身内から命を狙われたうえに、この失敗から門閥法廷に引き出される。そこで特殊メイクで変装したクリフトン・キャラモンと入れ替えられて、「スパイ大作戦」の様相。結局イララソングは無罪となり、グリデン=ホルムズに死刑が宣告された。

しかし、惑星系すら存在する巨大な領域が無限アルマダのごく一部であり、その巨大な領域がしずしずと宇宙空間を進んでいるだなんて、とんでもないことなのだが、しれっと当たり前のように書かれると何も言えない。

創竜伝15 〈旅立つ日まで〉

記録によると2020年12月20日にAmazonで購入したことになっている。それから5年半が経過したが、ようやく読みおえた。

アルスラーンやタイタニアの寂しい終わり方に比べると、こちらの方が普通に物語を終えていた。ギャグパートを支えていた小早川奈津子の死と共にドタバタ京劇は終了し、三千世界への旅立ちのための修行の日々を迎える、という穏やかな終劇。

創竜伝14 〈月への門〉

最終巻まで買っていたが、13巻で止まっていた。評判のあまりよくないシリーズだが、今読んでみると、とことん笑わせることに専念している作品と思われた。政治家が戯画化されていても、そこに深い政治思想を読み取る方がどうかしていて、むしろ、政治的には無色といってもいい。「デアルカ」にジョージ秋山の『ラブリン・モンロー』が響いているような気もするが、気のせいかもしれない。

ローダンの過去

「ローダンの過去」

第三の扉を前にして、誘発性罪悪感コンプレックスが艦隊を襲う。それは、過去の悪行を追体験して、さらに悪いものにするというものだった。少年時代のローダンが出会う天球儀盗難事件、強盗の見張り役疑惑など。それはペリーをきれいな外見で良いところに出入りができる状態のまま秘密裡に悪の仲間に引き入れる陰謀であった。それを見抜いた父ジェイク・ローダンはペリーをフロリダでロケット計画に携わるケネス・マローンのもとに直ちに送ることとした。ティン・カンの逮捕で一応事件の決着はつき、意識を取り戻したローダンは第三の合言葉を伝える。

「第四の叡智」

母メアリー・ローダンの従弟にあたるケネス・マローン大佐をペリーは「おじさん」と呼んで慕っていた。デイトナビーチの鉄道駅で迎えを待つペリーに近づく謎の男ロガンとその一味、その真の狙いはケネスから情報を引き出す伝手としてペリーを引き込むことだった。そのためにペリーが誤って妹を死なせたという新聞記事を見せ、さらに黒人メイドのベリンダを誘拐してペリーを操ることに成功する。ペリーはケネスを猟に誘い、ケネスも応じるが、ペリーの様子に悪の陰謀を感知したケネスは米軍をひそかに配置して罠をしかけている悪人を逆に一網打尽にしようと考えた。包囲を仕切っていた友人ファーガスンへの連絡に失敗してケネスは危うくロガンの罠にはまりそうになるが、アンブッシュ・サトーの介入で人質となっていたベリンダのところに誘導されて救出に成功、そこに戻ってきたロガンらとの争いが始まり多勢に無勢となりかけたところにようやく米軍登場、というハリウッド映画のデウス・エクス・マキナみたいな展開に。そして、妹を死なせてしまったのは母メアリーであり、ペリーは車の外にいて妹デボラを助けようとしていたことが明かされる。別の現実平面から戻ったローダンが第四の合言葉を発したことで第四の扉も開かれた。

不死の超人を人間に引き戻す過去ストーリーとしてみると、超人ロックの『クロノスの罠』に似ている。超人ロックのエピソードとしては「インフィニット計画」がその直後に後付けで連載された。

ラインの虜囚

2012年の新書版刊行時に買ったまま積読だった14年ものの田中芳樹。「ミステリーランド」のために書かれた本であるとのことで、ちょっと調べたら、島田荘司『透明人間の納屋』、森博嗣『探偵伯爵と僕』、法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』が既読だった。

2005年に書かれたこの本、当時の田中芳樹の絶妙なまでのうまさが光っている。なにしろ、きちんと話を着地させている。さらに、「『三銃士』の着想の裏にこんな冒険があった」という秘話ものにもなっている。子供を他の冒険活劇の本に引きずり込むパワーのある本だと思った。