笑ってしまうのだが、笑っていいものか。表現はコメディー寄りで、明らかに笑わせに来ているのだが、扱っているテーマは重い。
親子三人のドライブ中に起きた最初の事故のシーンで不穏な空気を漂わせつつ、動かなくなった車をガレージ前につけた父親、その義足の音が自分を苛め抜いた看守と同じだと気付いたワヒドは親子の後をつけ、見事に父親を誘拐する。しかし、男が人違いを主張したため、同様に人生を奪われた囚人仲間を訪ねて真贋をつけようとする。その道中も珍道中ものになっていておかしい。その間、男は車の収納の中に押し込まれている状態。そこに、娘からの電話があり、母親が倒れていて誰も頼れないという。一同は臨月の母親と娘を病院に連れていく (もちろんこの間も父親は車の収納の中)。観客がまじめだったので誰一人くすりともしなかったが、このあたりまではおかしみが勝っていた。
しかし、娘が父親以外への電話を禁止されていたことが明らかになってから映画の空気が変わる。そして、スリラーにありがちな俗な結末だが、ピタっと決めて終幕。
悲喜劇、重みと軽みの同居、また、それぞれのキャラクターの書き分けがくっきりしていて、どの人物の物語としてみても面白い、良い映画だった。





