その日JMで

この日のことを思い出してみる。
入ったら、丁度彼女のステージが始まるところだった。
赤いドレスをまとった彼女
カルメンの愛の歌
舞台を大きく使った舞
フラメンコを思わせるしぐさ

オープンではマタドール風の衣装

私の前に来た彼女
「結構です」と言い放ち、舞台からチケットを抜き取り私の目の前に突き出す。
私は黙って受け取るしかなかった。
その厳しい表情にすら魅かれてしまう。

何度も声をかけるが無視される。

ラウンジにいる彼女に手持ちの全てのチケットを渡そうとする。
「もうここにはこないから、これをもっていてもしょうがない。受け取ってください」
「受け取りません。他の女の子にあげてください」

私はただ「ありがとうございました」と言って引き下がるしかなかった。