母の庭で

不動産屋に媒介を頼んでしばらく経ったが動きはなく、今は家の中を空っぽにしようとしている。
ピアノも、箪笥も、鏡台も。母のお茶と生け花の免状も捨てた。主に私が買い溜めた文庫本も、段ボールに何箱になったかも分からないほどあったが、ほとんど捨てた。あまりに古く、ブックオフでは値段がつかない。SF系の珍しいものもあったが、幾らにもならなかった。グラシン紙のかかった岩波文庫など手にとる人もいないのだろう。
手入れをしなくとも、花は咲く。この花を見るのも今年が最後になるだろう。