吾輩はシャーロック・ホームズである

吾輩はシャーロック・ホームズである (角川文庫)
車中にて読了。柳作品は初読だが、非常に面白かった。夏目漱石の英国留学にシャーロック・ホームズを絡ませた作品はいくつか読んだが、いずれにも作者の意気込みを感じる。偉大な作家へのリスペクトと偉大な名探偵へのリスペクトの両方が根底にあるからだろう。黄色い下宿人然り、漱石とロンドンミイラ殺人事件然り。
この作品も、漱石とホームズについて良く調べているが、それだけではなく、当時のイギリスに、ひいては日本を含む「国家」のあり方への厳しい眼差しを感じた。また、自分の心の中にも黒人差別の感情が潜んでいることをナツメのみじめにおろおろする姿を通じて思い知らされた。