好きなんて言葉はいらない

夜の地下鉄の駅で若い、二人とも水商売風のカップルがいた。女は黒いぺかぺかしたジャケットを来た男に楽しげな笑顔を向け、二人で何やら話してた。そのとき、女の携帯が鳴る。
女は「これから仕事に行く」、と言って、それから、「好きよ」、と言った。そして、「言ったわよ」、と言ってから電話を切った。
その間、男は少し離れたところに立っていた。それから、また二人は近づいて、普通に話しはじめた。
そのとき、絶対に僕のことを好きとは言わないだろう人の誠実さを思った。